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Today's topic No. 007
  2016/7/12

 

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パンチ・ブラザーズが表紙を飾るムーンシャイナー誌2010年12月号(MS-2802)のおまけ付。

『ハウ・トゥ・グロウ・ア・バンド ~パンチ・ブラザーズの作り方』

パンチ・ブラザーズ (出演), マーク・ミアット (監督)
収録時間:本編88分+映像特典173分

●ブルーレイPCXE-50637 (本体¥4,800円)\5,184-
●DVD PCBE-54308 (本体¥3,800円)\4,104-


 ブルーグラスを超えて「史上最高のストリングバンド」と呼ばれるパンチ・ブラザーズ。彼らの初アルバム『Punch』発表の2008年2月26日前後の初の英国ツアーや米国ツアーの様子を中心に、前人未踏の音世界を創る様子を丹念に追ったドキュメンタリー映画『How To Grow a Band』(88分)と、その本編ではカットされた映像をほぼ3時間(173分)に渡って収めたボーナス映像が日本語字幕付きで7月20日に発売される。

 歴史に残るバンドのドキュメント映画にゲストでコメントするのはレッドツェッぺリンのジョン・ポール・ジョーンズやクラシック界のヨーヨー・マ、そしてジェリー・ダグラスら。また10歳くらいのクリス・シーリが弾く強烈な“Huckleberry Hornpipe”ほか、貴重なアーカイブ映像など。クリスのほか、ノーム・ピケルニー、クリス・エルドリッジ(クリッター)、ゲイブ・ウィッチャー、グレッグ・ギャリソンとポール・コワート(2009年に交代したベーシスト)ら、彼らの最初の出会いは、いわゆる「一目惚れ」だったという凄いミュージシャンたち、彼らの素顔や音楽への感性など、さまざまな角度から知ることができる。ボーナスDVDにはライブでの演奏が収められているほか、とてもシビアな練習の様子、撮影期間中に手に入れたロイド・ロアー#75316の調整風景やメンバー全員のインタビューなど、興味深い映像が満載だ。

 天才クリス・シーリが実質上のリーダーではあるが、全員がイーブンにギャラを分け合い、自分たちの音楽を創るという抑えがたい衝動に突き進んで行く姿を捉えた痛烈な音への願望に溢れた希有な音楽ドキュメンタリーである。今どきの若者が、全身全霊をかけて音と対峙する……ライブ中心の映像ではないが、「なるほど、前人未到の音を創っていくとは、こういうことなのか!」と納得の作品。おそらく1946〜47年、ビル・モンローへのブルーグラスボーイズをドキュメントしていたら、アールを中心に同じような光景、というか魂/精神の発露が観られたのかも知れないと感じてしまう。

 現にジェリー・ダグラスは、「彼らは“Bluegrass Breakdown”を1948年(実際は1947年)のビル・モンローの演奏と寸分たがわず再現することができるんだぜ」と述べたあと、しばらくして当時のブルーグラスボーイズとまったく同じ楽器編成で演じられる「バッハ/ブランデンブルク協奏曲 第3番 G major」の完璧にブルーグラス楽器であるにもかかわらず感動的に芸術音楽なこと! また、クリス・エルドリッジが見せるトニー・ライスの完コピやノーム・ピケルニーのJ.D.クロウ、またクリス・シーリがバンジョー頭(ポリリズム)で紡ぎ出すメロディとビート、……等々、旧世代!?には不可解とも思えるパンチブラザーズの音創りが分解されていき、その音楽の構造、そして、わたしにはブルーグラスらしさがより強く感じられる。本編のはじまりが、彼らが口ずさむジミー・マーティンの“Ocean of Diamonds”であることが、すべての解でもあるのかもしれない。
 パンチブラザーズの音楽を、「ブルーグラスじゃない」とか、「理解不能」と耳を閉じるのは簡単だ。しかし1971年にニューグラスリバイバルが登場したときに、完全に耳をふさいだ人たちはそののち何十年も、ワクワクするチャンスを逃してきたこともあったように思う。もちろん無理する必要はないし、好き嫌いも自由だろうが、自己啓発の意味も込めて理解しようとすればできることもあるのではないだろか。この作品は、パンチという21世紀のアコースティック音楽のリーダーたちを理解するにはとてもすばらしいチャンスを与えてくれると思う。決して音楽エンタメ映像ではないが、音楽を創るという過程が見事に描かれたすばらしい音楽ドキュメント映像であり、音楽を心底から志す者には、とてもインスパイアーされるすばらしい作品である。

☆☆ビー・オー・エム・サービス(御注文は:TEL 0797-87-0561:FAX 0797-86-5184:E-MAIL order@bomserv.comにて承ります。☆☆


パンチ・ブラザーズが表紙を飾るムーンシャイナー誌2010年12月号(MS-2802)のおまけ付。