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NEW ARRIVALS 0205       2002/06/02
[BLUEGRASS NEW RECORDINGS]
●JIM LAUDERDALE & RALPH STANLEY『Lost In The Lonesome Pines』DUAT-1125 CD \2,750
Deep Well Of Sadness/The Apples Are Just Turning Ripe/Lost In The Lonseome Pines/Zacchaeus/Quit That/I Think Somebody Better Come Back Home/Redbird/Forever Ain't No Trouble Now/She Would Not Tell Her More/I Should Have Listened To Good Advice/Oh Soul/She's Looking At Me/Boat Of Love/Listen To The Shepherd 全14曲
75歳にして突如アメリカン・ルーツ・ミュージックの導師として時の人となったラルフ・スタンレー、矢継ぎ早のアルバム・リリースが続いているが、今作は、99年のアルバム『I Feel Like Singing Today』(Rebel REB-1755)で共演して大きな話題となったナッシュヴィルのカントリー・シンガー/ソングライター、ジム・ローダーデイルとの第2作。ここでも、ビル・モンロー/カーター・スタンレーの名曲"Boat Of Love"を除く13曲をジムのオリジナルでかため、ふたりの完璧に息の合ったハーモニーでじっくりと聴かせている。ルーヴィンやジョニー&ジャックにも例えられるほどに仕上がったふたりのヴォーカルをサポートするのは、歴代でも最高に仕上がった感のあるクリンチ・マウンテン・ボーイズ、ラルフII、ジェイムズ・プライス、スティーヴ・スパークマン他。前作でも力を貸していたグレイトフル・デッドのメンバーで、デッドの詩の多くを作ってきたロバート・ハンターとの共作を含むジムのオリジナルが、さすが、ナッシュヴィルのプロの実力を遺憾無く発揮すると共に、ラルフのマウンテン・ソウルを十二分に理解した作品として前作を大きく超える出来栄えが凄い。
●DR. RALPH STANLEY & THE CLINCH MOUNTAIN BOYS『Live at McCabe's Guitar Shop』DCN-1002 CD \2,750
Intro/Orange Blossom Special/Ralph Introduces James Alan Shelton/Sunny Side Of The Mountain/Ralph Introduces Jack Cooke/Sittin' On Top Of The World/Ralph Introduces Steve Sparkman/Clinch Mountain Backstep/Ralph Introduces Ralph II/Jesus Savior, Pilot Me/Pretty Girls, City Lights/Ralph Introduces James Price/Cacklin' Hen/Ralph II Introduces His Father/Man Of Constant Sorrow/Daddy's Wildwood Flower/Intro To Oh Death/Oh Death/I'll Wear A White Robe/Daybreak In Dixie/Will You Miss Me/Rocky Island/Rank Strangers To Me 全15曲
ドクター・ラルフ・スタンレーの新作ナンバー2、こちらは昨年2月11日、サンタ・モニカのマッケイブス・ギター・ショップでのライヴ。ラルフII、ジェイムズ・プライス、ジェイムズ・アラン・シェルトン、スティーヴ・スパークマンそしてヴェテラン、ジャック・クックという、歴代最高ともいえるクリンチ・マウンテン・ボーイズを従えての悠々たるライヴ。前半は、ラルフがメンバーを順次紹介しながら彼らをフィ−チュアしていき、雰囲気が盛り上がったところで御大が登場するという構成も、ありがちなものとはいえ手慣れた、鮮やかな構成ではある。アイドル、キース・ウィットリーに限りなく近づいたラルフII、シェルトンの正確無比なクロス・ピッキン・ギター、ラルフと見まごうばかりのスパークマンなど、最高に仕上がったバンド・サウンドもいうことなし。ラルフ・スタンレー、75歳にしてこの見事なまでに充実したパフォーマンスにただ感服。
●THE ROLAND WHITE BAND『Jelly on My Tofu』CCCD-0211 CD \2,750
Jelly On My Tofu/Sunday Sunrise/Hoping That You're Hoping/Bermuda Drive/Someone You Have Forgotten/Cabin On the Hill/Rose City Waltz/February Snow/Satisfied Mind/Roland's Rag/Flesh/Blood and Bone/Old Fashioned Love/Rawhide 全13曲
ナッシュヴィル・ブルーグラス・バンド退団後、自らのバンドで活動を続けているヴェテラン、ローランド・ホワイトの何年ぶりになるのだろう、久々の新作。ローランドの、あの玉を転がすような独特の優しいタッチのマンドリンと、アラン・マンデの手の込んだフレーズが炸裂する新作インスト――ゼリーをかけた豆腐?んっ?――から、懐かしいカントリー・ガゼットが甦る、何とも言えぬ味わいのスモーキング・ヴォーカルで、一気にローランド・ワールドへと聴き手を引きずり込んでいく。リチャード・ベイリー(bj)、ダイアン・ボウスカ(g)、トッド・クック(bs)という編成に、前述のマンデ、スチュアート・ダンカン(f)、アンディ・レフトウィッチ(f、1曲)などがゲスト参加。レスター・フラットの名曲3曲(シェル・シルヴァースタイン作の"February Snow"が美しい)に、ボブ・ウィルスやルーヴィンなど、ローランド好みのヴォーカル・ナンバーに、ローランドの新作3曲他のインストというバランスも秀逸。日本人の心の琴線に触れるマンドリンのトーン、タッチと優しいヴォーカルが一段と深みを増している。
●JERRY DOUGLAS『Lookout For Hope』SH-3938 CD \2,750
Little Martha/Patrick Meets The Brickbats/Footsteps Fall/Monkey Let The Hogs Out/Lookout For Hope/Cave Bop/Senia's Lament/The Wild Rumpus/The Sinking Ship/In The Sweet By & By/The Suit 全11曲
「ドブロ・キング」ジェリー・ダグラスの最新作。ヴィンテージ・ドブロ、シアホーンの3つのモデル、ギブソンのシグネチャー・モデル、さらにはコナ・ギターなど、さまざまな楽器を使い分け、各楽器の微妙なトーン、ニュアンスを見事なまでに演出している。独自のアメリカン・ミュージックを作り続けるジャズ・ギタリスト、ビル・フリーゼル――アルバム『Nashville』(WB-79415)で共演している――の88年作品をカヴァーしたタイトル曲は10分以上に及ぶ大作、パースペクティヴなひろがりが素晴らしい。サム・ブッシュ、ブライアン・サットン、スチュアート・ダンカンらとのハード・ドライヴィング・ブルーグラスに、ジェフ・コフィン(フレックトーンズ)のサックスをフィ−チュアしたバップ・チューンなど、デュアン・オールマンのカヴァーからジェリーの6曲のオリジナルまで、豊かな表現力で演じきった凄いアルバムだ。ゲスト参加のモーラ・オコンネルとジェイムズ・テイラーのヴォーカル曲も、優しいタッチのドブロに包まれて、夫々1曲ずつではあるが、その個性を十分に発揮した美しいナンバーに仕上がっている。ドブロ(リゾフォニック・ギター)という楽器の可能性を無限大にまで広げ続けるジェリーの意欲作。
●DOYLE LAWSON & QUICKSILVER『Hard Game Of Love』SH-3949 CD \2,750
Blue Train(of the Heartbreak Line)/Hard Game Of Love/Oak Ridge Rendezvous/We Missed You/Nightingale/Standing Room Only/Poor Boy Working Blues/In My Dreams/A Thing Of The Past/My Trust In You/Hand Made Cross/As Long As The World Stands 全12曲
このところゴスペル・アルバムに専念していた感のあるドイル・ローソン&クイックシルヴァー、95年の『Never Walk Away』(SH-3842\2,750)以来実に7年ぶりとなるセキュラー・アルバム。ドイルをして久々にその気にさせた"Blue Train(of The Heartbreak Line)"のキックオフから一気にクイックシルヴァー流ソリッド・ブルーグラスの世界にひきずりこんでしまうその腕の冴えは、さすが、ケンタッキー・マウンテン・ボーイズ、サニー・マウンテン・ボーイズで鍛えられた筋金入りのソリッド・ブルーグラッサー。常にメンバー・チェンジを繰り返しながら一貫してハイ・レヴェルのコンテンポラリー・ブルーグラスを作り続け、80年代末以降の流れの規範となってきたクイックシルヴァー、ここでも、デイル・ペリー、ハンター・ベリーらの2001年ヴァージョンでのナッシュヴィル録音7曲と、バリー・アバーナシー、ジミー・ヴァン・クリーヴらを擁した97年ヴァージョンでのドゥービー・シー・スタジオでの5曲という構成は、文句無しにコンポラ・グラスの最高峰。手垢のついたスタンダードを一切排した、ロバート・ゲイトリー、ビリー&テリー・スミスら、現在第一線のソングライターの新鮮なブルーグラス感覚が素晴らしい。クイックシルヴァーでは極めて稀なインストも収録されている。
●KATHY KALLICK『My Mother's Voice』CCCD-0201 CD \2,750
East Virginia Blues/Hello Stranger/Rosewood Casket/Cotton-Eyed Joe/My Native Home/All The Good Times(Are Past And Gone)/My Home's Across The Blue Ridge Mountains/Shady Grove/I Never Will Marry/Wreck Of The Old #9/The Tailor And The Mouse/Willie The Poor Boy/Banks Of The Ohio/Row Us Over The Tide/Waterbound/I'll Fly Away/Web Of Birdsong 全17曲
キャシー・キャリックの新作は、彼女が母ドディ・キャリックから学んだトラディショナル・ソング集。ドディは、50年代半ばから70年代、フォーク・リヴァイヴァルの時代にシカゴ・エリアで活躍したフォーク・シンガーで、トラッド・ソングの収集、研究にも力を注いだということで、シカゴ・フォーク・シーンの陰の功労者ともいえる存在であったと言う。その母から学んだ曲を、リン・モリス、ピーター・ローワン、キース・リトル、スザンヌ・トーマス、クレア・リンチ、ローリー・ルイスなどをヴォーカル・パートナーに迎え、シンプルな小編成のバックでメロディ・ラインをきれいに生かして優しく、美しく唄いあげている。誰もが耳馴染みのあるメロディが、キャシーの静かななかに深い味わいをもったヴォーカルで新鮮に響いてくる。サリー・ヴァン・メーター(d)、ロン・スチュワート(f)、ビル・エヴァンス(bj)、ジョン・ライシュマン(m)他、各曲にあわせて配されたサポート陣の細やかな音使いも素晴らしい。キャシー・キャリック・バンドでの2曲も秀逸。全編に溢れるオールドタイム・フィーリングに心やすらぐ。
●DAVID GRIER『I've Got the House to Myself』DREAD-0201 CD \2,750
Bill Cheatum/Turkey in the Straw/John Henry/Sally Gooden/I've Got the House to Myself/Evening Prayer Blues/Arkansas Traveler/Ookpic Waltz/Choices We've Made/Black Mountain Rag/Whistling Rufus/The Gal I Left Behind Me/Sally Gooden(alternate take) 全13曲
ブルーグラス・フラット・ピッキン・ギターの最高峰デヴィッド・グリアの最新作。誰もが知っているトラディショナル・ソングを素材に、ソロ・ギターという、これ以上はないくらいに神経を使うシチュエーションで、クラレンス・ホワイト直伝の、独特のタイミングをもったシンコペーションを多用した、まさに「一音入魂」という言葉にふさわしい、磨きぬかれた技と心のこもった演奏、卓抜なインプロヴィゼーションに脱帽。片時もギターを手放さないというデヴィッドの、この楽器への熱い思いが、マーティ・ランハム作のギターの暖かい音色とひとつになって伝わってくる。アコースティック・ギター・マガジン選出の"Artists of the Decade" この10年でもっとも優れたアーティストのひとりに選ばれた彼の、面目躍如たるソロ・プロジェクト。おまけの1曲あり。
●BAUCOM, BIBEY AND BLUERIDGE『Come Along With Me』SH-3947 CD \2,750
Gonna Travel/It's All My Fault/Vandiver/Shifting Sands/Livin' It Up/Prayer Bells Of Heaven/The Fiddler/My Lord's Going To Set Me Free/Rock Hearts/Come Along With Me/I'll Still Write Your Name In The Sand/He Broke The Chains/The New John Henry Blues 全13曲
コンテンポラリー・ブルーグラス・バンジョーの規範を作ったとされるテリー・バウカムと、コンポラ・ソリッドを代表する超絶テクの主アラン・バイビーの双頭ユニット、ブルーリッジの新作。「トラディショナル・ソウルをもったコンポラ・グラス」と評されたワイアット・ライスのサンタ・クルーズからランブラーズ・チョイスで、味わい深いヴォーカルを聴かせていたジュニア・シスクの加入で、これまでのコンポラ・ソリッド最前線のスピード感溢れるサウンドに、アーリー・ブルーグラスのディープな感覚が入り交じった、新しい面白さを演出している。ジミー・マーティンやマック・ワイズマン、チャーリー・ムーアなどの曲をとりあげ。また、シスクがサンタ・クルーズ時代に作ったものとおぼしき"Come Along With Me"など、ゴスペルをいくつも組み込んだあたり、シスクのトラッド・ヴォーカルを強調する狙いが、バウカム/バイビー・コンビの持ち味とうまく融合して機能している。ロン・スチュワートがゲスト参加。
●JOHN COWAN『Always Take Me Back』SH-3932 CD \2,750
They Always Take Me Back/Someone Give Me a Stone/Sittin' On Top of the World/Long Distance Runaround/Blood/18 Years/Read On/In My Father's Field/Two Quarts Low/Call Me/Monroe's Mule/Love Alone/Mr. Banjo 全13曲
ワン&オンリーのヴォーカル・スタイリスト、ジョン・カウワンの最新作。ロック、ソウル、ブルース。ブルーグラス、カントリーなどさまざまなアメリカン・ミュージックをブレンドした独自のサウンドを生み出している、新たに編成したジョン・カウワン・バンド――スコット・ヴェスタル(bj)、ジェフ・オートリー(g)、リューク・ブラ(f)、パシ・レピカンガス(dr)――を基本に、ランディ・コーアズ(d)、ダレル・スコット(m)など曲者たちを加えての録音。ニュー・グラス・リヴァイヴァルの延長線上にあるハードなブルーグラスから、得意のブルース感覚に溢れた曲、さらには余人には真似のできないシャゥティング・ヴォーカルまで、まさにジョン・カウワンならではのスリリングな音楽がつまっている。
●LEFTOVER SALMON『Live』COMP-4339 CD \2,750
Let's Give A Party/Steam Powered Aeroplane/Bill's Boogie/Dark Green Thing/Out In The Woods/Unplug That Telephone/Get Me Outta This City/Railroad Highway/Danger Man 全9曲
アイドル、サム・ブッシュやベラ・フレックに、アール・スクラッグス、デル・マカーリーなどを迎えた99年の前作『Nashville Sessions』(HR-62142\2,750)で一躍ブルーグラス界にもその名を知らしめたレフトオーヴァー・サーモンの、コンパス・レコードからの新作。グレイトフル・デッドを師と仰ぎ、フレックトーンズやブルース・ホーンズビーをはじめとするアメリカン・ロックのさまざまなノウハウを、ニュー・グラス・リヴァイヴァルを新たなスタンダードとしたジャム・グラスのスタイルと融合させた、いわゆるジャム・バンドの代表選手として注目されるグループ。ここでも、キーボード、エレクトリック・ギターにバンジョー、マンドリン、フィドルなどをぶちこんで、ブルーグラス・ロックを標榜する彼らの本領を遺憾無く発揮した、従来の概念では計ることのできないハイ・レヴェルの音楽――彼ら自身は「ポリエスニック・ケイジャン・スラムグラス」と称している――、テルライドの申し子ともいうべきサウンドを創り出している。デンヴァーとサン・フランシスコのフィルモア・オーディトリアムでの昨年のライヴ。今年3月4日、ガンのため39歳という若さで他界した、サウンドの要のバンジョー・プレイヤー、マーク・ヴァンの遺作となった。ハートフォードの"Steam Powered Aeroplane"と、キーボードのビル・マッケイのオリジナル"Railroad Highway"には、ジョン・カウワンがヴォーカルで加わっている。
●DREW EMMITT『Freedom Ride』COMP-4337 CD \2,750
Freedom Ride/Bend In The River/Solid Ground/Valley Of The Full Moon/Paving Eisenhower/If You're Ever In Oklahoma/Tangled Up In Blue/Lonesome Road/Rainmaker/One Step At A Time/Memories Of Mother And Dad 全11曲
上記レフトオーヴァー・サーモンのリード・シンガー/マルチ・インストゥルメンタリスト、ドルー・エミットのソロ・プロジェクト。ドルーの永遠のヒーロー、ジョン・カウワン(bs、ハーモニー・ヴォーカル)の現在のバンド、ジョン・カウワン・バンド――スコット・ヴェスタル(bj)、ジェフ・オートリー(g)、リューク・ブラ(f)、パシ・レピカンガス(dr)――を基本セットに、サム・ブッシュ、スチュアート・ダンカン、ヴァッサー・クレメンツ、ピーター・ローワンなど、如何にもと思わせる人脈を配したアルバム。ドルーはここではヴォーカルとマンドリンに専念している。1984年のプログレッシヴ・ブルーグラス・バンド、レフト・ハンド・ストリング・バンドの結成以来、一貫して追い続けてきたサム・ブッシュそしてニュー・グラス・リヴァイヴァルを出発点に、NGR以降ベストのニューグラス作品、21世紀版NGRといっても過言ではない、凄い仕上がりとなった。6曲を数えるオリジナル曲も見事にニューグラスのいまを表現し、ピーター・ローワンやボブ・ディランのカヴァーとのバランス感覚も秀逸。バンドでの音楽とはまた別の表情をみせた、NGRフォロワーぶりが楽しい。
●MIKE MARSHALL & DAROL ANGER『The Duo Live:At Home And On The Range』COMP-4333 CD \2,750
Down In The Willow Garden/Big Man From Syracuse/Vasen Your Seat Belt-/The Crossing/Shoot The Moon/Gator Strut/Fiddles of Doom Medley(Old Dangerfield/Big Mon)/In The Pines/Hot Nickels/Shebag, Shemor/Jerusalem Ridge/Frogs On Ice 全12曲
デヴィッド・グリスマン・クインテットを出発点に、ブルーグラスをベースにしながらもさまざまな音楽のアイディア、手法を貪欲に採り入れて、アコースティック・アンサンブルの新たな地平をクリエイトし続けるふたり、フィドルのダロル・アンガーと、マンドリン/ギター/フィドルのマイク・マーシャルのコンビによる最新第3作。前2作では、アンガー・マーシャル・バンドの名前でリズム・セクションを従え、レコーディングではいろんなゲストを迎えてひろがりのあるアコースティック・フュージョンが新鮮だったが、ここではタイトルにあるとおり、ふたりだけでのライヴということでまたひとあじ違う演奏が楽しめる。スコッツ・アイリッシュのルーツを偲ばせるスタイルから、アグレッシヴなジャズ・フィドル、そしてモンロー・トラディションを昇華したツイン・フィドル・メドレーまで、多彩な表情のアンガーのフィドルを前面に押し立てて、落ち着いた、耳に優しい音楽を生み出している。マーシャルも、ギター、マンドリン、フィドルとサポートにまわりながらも、自作曲での正統派(?)ドーグ・スタイルに得意技をきめるあたりはさすが曲者ぶりを十十分に示している。
●GARY BREWER『Home Brew』CCCD-0202 CD \2,750
Elvis On Velvet And Monroe On Grass/Dance In Old Kentucky/Chattanooga Dog/Poor Ellen Smith/God Was There/Old Dan Tucker/I Haven’t Seen Mary In Years/Molly And Mildred/Lonesome Guitar/Pastures Of Plenty/Sea Of Heartbreak/Little Liza Jane 全12曲
ケンタッキー・ブルーグラスの雄、ゲイリー・ブリューワー&ケンタッキー・ランブラーズの新作。このところ親交を深めているトム・T・ホールの新作("Bill Monroe for Breakfast"にはじまるシリーズ?最新作)をタイトルに、ビル&ジェイムズ・モンロー、ジミー・マーティン(これもトム・T作)、ゲイリーの永遠のヒーロー、ラリー・スパークスなどのクラシックにトラッド・ソングを配して、彼一流のゴリゴリ・ブルーグラス(ゲイリーの表現では"Brewgrass"ブリューグラスと呼ぶらしい)に仕立て上げている。スチュアート・ダンカン(2曲)、ロブ・アイクス(1曲)、テリー・エルドレッジ(1曲)などがゲスト参加、また、ラスト"Little Liza Jane"では父フィンリー・"ジム"・ブリューワーがオールドタイム・フィーリングを加えている。
●FIDDLERS 4『Fiddlers 4』COMP-4334 CD \2,750
Pickin' The Devil's Eye/You Little Wild Thing(La Betaille)/E. St Louis Todalo/Hidirassirifo/Just A Closer Walk With Thee-I Know/Chez Seychelles/I Wish I Knew How It Would Feel To Be Free/African Solstice/Man Of Constant Sorrow/Mazurka-Acadian Two-Step/Greek Medley-Polly Put The Kettle On/Danse Caribe/Atchafalaya Pipeline 全13曲
ダロル・アンガーがさまざまなシーンで活躍するフィドラー4人でスタートさせた新しいユニット、フィドラーズ4のデビュー作。集まったのは、ケイジャンのスーパー・グループ、ボーソレイユのリーダー、マイケル・ドゥーセ(1曲ヴォーカル)、オールドタイム・フィドルのブルース・モルスキー(ヴォーカルとギターも)、チェロの新星ラシャド・エグルストンそしてダロルの4人。一筋縄ではいかないこの顔ぶれからも予想されるとおり、ここに収められたのは、オールドタイム、ケイジャン、スウィング・ジャズにニュー・オーリーンズ・ジャズ、アフリカ音楽にポルカやマズルカと、およそフィドルで演奏されるありとあらゆる音楽を、4人それぞれのノウハウ、得意技で料理したユニークなフィドル音楽集。ダロル・アンガーの、フィドルにかける思いが結実した、クールでありながら熱いフィドル集。オマケ・トラックあり。
[BLUEGRASS REISSUES AND DISCOVERIES]
●CURTIS McPEAKE『Vintage 1976』LAKE-0005 CD \2,750
Cripple Creek-Sally Goodin'-Sail Away Ladies-Under the Double Eagle/Katy Hill-Shortnin' Bread-Cumberland Gap/Maple on the Hill/John Henry-Big Ball in Town/I've Found the Way-Cryin' Holy Unto the Lord/Salty Dog Blues/Froggy Went A-Courtin'-Sally Ann/Lonesome Road Blues-Grandfather's Clock/Gathering Flowers-Nine Pound Hammer/Dear Old Dixie-Bells of St. Mary/The Last Thing on My Mind/I'll Fly Away-Fireball Mail/Farewell Blues/Maggie Blues-John Hardy/Cindy's Coming From the Ball/Lime House Blues-Warried Man Blues/Wreck of the Old '97-Goodbye Liza Jane/Headin' South/Towanna/Flint Hill Special 全20曲
アール・スクラッグス本人よりもスクラッグス・スタイルに精通している(?)らしい、カーティス・マクピークのレア音源が、自身の手で発掘された。タイトル通り、76年2月に録音されたこの作品、ベニー・マーティンとアンクル・ジョッシュ・グレイヴス、ふたりの達人を迎えての、リラックスしたなかに各人の必殺技が飛び交う、たぶん演奏している彼ら自身が楽しくてしようがないという様子がビシビシ伝わってくる。ジョン・ハートフォードとのコラボレーションで絶頂期の感覚を取り戻したマーティンと、スクラッグス・レヴューでロックの世界に踏み込んだ直後のジョッシュ、なによりこのふたりの元気が素晴らしい。3人それぞれが得意技をさりげに交換しながらのスタンダード特集、メドレーが多くって1曲ずつが短いのと、ドラムがちとうるさいのが難点といえば難点ではあるが、ヴェテランの名人芸がたっぷりつまった、タイトルに恥じない名演集だ。
●LESTER FLATT & BILL MONROE『Live at Vanderbilt』BCD-16614 CD \3,100
Lester Flatt:Flint Hill Special/Lost All My Money/I'll Be All Smiles Tonight/Homestead On The Farm/Rawhide/Wabash Cannon Ball/Orange Blossom Special/Nine Pound Hammer/Get In Line Brother/The Fall Is A Lonesome Time For Me/I Know What It Means To Be Lonesome/Dig A Hole In The Meadow/Bill Monroe:Uncle Pen/Blue Moon Of Kentucky/My Old Used To Be/Lester Flatt & Bill Monroe:Will You Be Lovin' Another Man/My Little Cabin Home On The Hill/Crying Holy Unto The Lord?/Lester Flatt:Sally Goodin'/Bill Monroe:/Muleskinner Blues/Lester Flatt:Salty Dog Blues/Red Wing/Wreck Of The Old '97/Martha White Theme/Cumberland Gap/Foggy Mountain Breakdown 全26曲
1974年3月19日、ナッシュヴィルのヴァンダービルト大学で行われたレスター・フラット&ナッシュヴィル・グラスのライヴを完全収録したアルバム。ビル・モンローとレスター・フラットの歴史的リユニオン、1948年に袂を別って以来実に4半世紀ぶりの公式録音ということで大いに話題となったもの。71年のビーン・ブロッサムで一緒にステージに立ってから、毎年のサマー・シーズンの呼び物となっていったふたりの共演が、はじめて、そして最後に、公式に録音されたアルバム。当初、RCAヴィクターからLP発売されたものに、ビル&レスターの"Crying Holy Unto The Lord?"、ビルの"Uncle Pen"、レスターの"Martha White Theme"など未発表の11曲を加えた完全盤として、ベア・ファミリーのボックス・セット『Flatt on Victor Plus More』(BCD-15975\19,250)に収められていた。今回は、その完全盤を1枚のCDとしてあらためて発売したもので、フラット&スクラッグスの『At Carnegie Hall』(KOCH-7929\2,750)と並ぶお宝ライヴ音源。ビル&レスターの共演はもとより、当時弱冠15歳のマーティ・スチュアート、最近ロンダ・ヴィンセント&ザ・レイジへの参加で再び注目されるケニー・イングラムなど、ナッシュヴィル・グラスのハードにドライヴするソリッド・ブルーグラスが素晴らしい。そして何よりも元気なレスターの、あのブルーグラス史上最高のヴォーカルがファンには嬉しい。ブックレットには、最近のマーティへのインタヴューをまとめたストーリーが掲載されている。
●BLAINE SPROUSE『Dogwood Winter』GHD-5098 CD \2,750
Angelina Baker/Spider in the Window/Weaving Way/Dogwood Winter/Soldier's Joy/Lady Jane's Gray/Little Rabbit/Temperance Reel/Run Johnny Run/Cancun Waltz/Eighth of January/Lorena 全12曲
最近またまた師匠ケニー・ベイカーの新作『Spider Bit the Baby』(OMS-25110\2,750)のハーモニー・フィドルで、その健在ぶりをアピールしたブレイン・スプラウス、これは、92年にマーク・ハワード(g&m)がプロデュースして、カセットのみで発売された作品のCD化。クラスター・プラッカーズの仲間たち、ブレント・トゥルイットやリチャード・ベイリーに、デヴィッド・グリア、マイク・コンプトン、ロイ・ハスキー・ジュニアといった通好みのラインナップで、落ち着いた、正統派ブルーグラス・フィドル・アルバムに仕上げている。スコッツ・アイリッシュのルーツを想起させる曲やフォスター・ソング、お馴染みのトラディショナル・フィドル・チューンに、タイトル曲以下3曲のオリジナル(ハワード作)を配して、クラスター・プラッカーズにも通ずる趣味のよさが伝わってくる、上質のフィドル音楽集。
●V.A.『Mother, Queen Of My Heart:A Collection Of Songs Inspired By Mom』SH-3948 CD \2,750
Mother, The Queen Of My Heart(Lonesome Standard Time)/The Sweetest Gift(Seldom Scene w/ Emmylou Harris & Linda Ronstandt)/Peter Pan(James McMurtry)/I'm Goin Back To Mom And Dad(Bad Livers)/Use A Napkin(Not Your Mom)(Kathy Kallick)/Forty Years Old And I'm Livin' In My Mom's Garage(Austin Lounge Lizards)/Mama Don't Allow No Music(Doc Watson)/Unwed Fathers(Tim & Mollie O'Brien)/She Sews The World With Love(Darrell Scott)/Thank God For A Mama(Lonesome River Band)/If I'd Had A Mother Like You(Don Rigsby)/Mom's Old Picture Book(Lou Reid)/Are We There Yet Momma(Walter Hyatt)/Shake Hands With Mother Again(Laurel Canyon Ramblers) 全14曲
ジミー・ロジャースの"Mother, The Queen Of My Heart"をタイトル・トラックに、ハンク・ウィリアムズなどの昔から、カントリーの世界で数限りなく唄われて、いわゆるモラリティ・ソングと呼ばれるひとつの大きなジャンルを形成してきた「母さんの唄」、これは母の日に因んでそうしたマザー・ソングを集めたコンピレーション。シュガー・ヒルのカタログから、コンテンポラリー・ブルーグラスを中心にソングライター系の作品までをカヴァーしたもの。
●V.A.『Gold Rush at Copper Creek』CCCD-6001 2CD \1,980
Trail of the Lonesome Pine(Ron Spears & Within Tradition)/Grandpa Loved the Carolina Mountain(Ron Spears & Within Tradition)/Rattler Treed a Possum(Tom, Brad & Alice)/Coal Creek March(Tom, Brad & Alice)/Bill Monroe Singer of Lonesome(Jack Tottle)/Bluegrass Sound(Jack Tottle)/Vertie's Dream(Jones & Leva)/I Need to Find(Jones & Leva)/Before the Prailie Met the Plow(Keith Little)/Nightingale(Keith Little)/Loved You Better Than You Know(Ginny Hawker & Kay Justice)/Step Out in the Sunshine(Ginny Hawker & Tracy Schwarz)/Elvis on Velvet, Monroe on Grass(Gary Brewer)/Molly & Mildred(Gary Brewer)/Uncle Henry's Gone(Wolfe Brothers)/Up on Sugar Hill(Wolfe Brothers)/Trust Jesus(Local Exchange)/If You See a Light(Local Exchange)/Carolina Blue(Maro Kawabata)/Samantha(Maro Kawabata)/The Farmer Is the Man(Bob Bovee & Gail Heil)/Yellow Rose of Texas(Bob Bovee & Gail Heil)/East Virginia Blues(Kathy Kallick)/Shady Grove(Kathy Kallick)/Diamond Joe(Crooked Jades)/Hard for to Love(Crooked Jades)/Prairie Girl(John Reischman)/My Home Far Away(John Reischman)/Uncle Charlie's Revenge(Bill & Libby Hicks)/Dog Passed a Rye Straw(Bill & Libby Hicks)/Cincinnati Southern(James Reams)/Coal Dust in My Soul(James Reams)/My Long Journey Home(Tony Ellis)/Red Rocking Chair(Tony Ellis)/Through the Window(Patent Pending)/House of Heartbreak(Patent Pending)/There Was a Time(Roadside Theater)/One Day We Shall Be Free(Roadside Theater)/Wanderlust(Chris Brashear)/Lost Soldier Son(Chris Brashear)/Katy Dear(George Shuffler & James Alan Shelton)/Old Leather(George Shuffler & James Alan Shelton)/Black Still Waters(Bluegrass Alliance)/Wayfaring Stranger(Bluegrass Alliance)/Waterbound(Dick Kimmel)/Just Walkin' & Talkin'(Dick Kimmel)
近年、上質のトラディショナル・ブルーグラス、オールドタイム・ミュージックを数多く送り出しているカパー・クリーク・レコードのサンプラー。24組の有名/無名アーティストの全46曲を2枚のCDにパッケージしたもの。まずこれを聴いて、そのなかで気に入ったものを追いかけてみるという楽しみを含んでいる。2枚組で\1,980という超廉価盤はオススメ。
[FOLK & OLDTIME NEW RECORDINGS]
●DOC WATSON AND FROSTY MORN『Round The Table Again』SH-3935 CD \2,750
Lynchburg Town/Coo Coo Bird/Blues Walkin' Round My Bed/She's So Sweet/On a Monday/Working Man Blues/Jimmie's Mean Momma Blues/Walking In Jerusalem/Show Bizness/Sincerely/Battle of Nashville/You Ain't Going Nowhere/C.C. Rider/Court On High/Nights In White Satin/Sugar Babe 全16曲
アメリカン・ミュージックの至宝ドク・ワトソンの最新作は、マール・フェスで録音されたフロスティ・モーンとのライヴ。今は亡きマール・ワトソンが、25年以上も前に、父ドクとの音楽とは別の世界を求めて作ったグループがフロスティ・モーン、ピアノやドラムを加えて、トラッドに縛られない音楽を創り出そうとしていた。のちには父ドクも一緒に演奏するようになっていた。マール亡き後も定期的に演奏する機会を持ち続けたフロスティ・モーン、マールの位置に遺児リチャードが参加してのドクとのライヴ。サウンドは多少変わろうともドクの音楽は微塵も揺るぐことなく、いつもどおりの枯れた味を淡々と伝えてくれる。フロスティ・モーンのメンバーをフィ−チュアした曲も多く含まれ、普段とはひと味違うドクも楽しめる。
●BARRY AND HOLLY TASHIAN『At Home』CCCD-0212 CD \2,750
We Could/A Man's Best Friend Is His Automobile/These Little Things/One More Me(The Cloning Song)/Whiskey Before Breakfast-Beaumont Rag/There Goes My Love/More And More/The Sound of Your Name/Lonesome Highway Blues/My Happiness/My Window Faces the South/Watermelon Time in Georgia 全12曲
ヴェテラン夫婦デュオ、バリー&ホリー・タシアンの最新作。フォーク、ウェスタン・スウィング、カントリー、ブルーグラス、ポップ・スタンダードなど、さまざまなアメリカン・ミュージックを、夫婦ならではの息の合ったデュエットで、ハート・ウォーミングに、優しく唄っている。若き日の、ビートルズに影響されてのロック体験や、グラム・パーソンズ、エミルー・ハリスとのカントリー/カントリー・ロックを根っこに、ブラザー・デュオやトラッドの方向へとシフトしてきたふたりの、ここまでため込んできたものを、5曲のオリジナルとバック・オウエンズやエヴァリー・ブラザーズのカヴァーというかたちで1枚のアルバムに凝縮した、といった趣きがよく表われた作品。
●TOM, BRAD & ALICE『We'll Die In The Pig Pen Fighting』CCCD-0196 CD \2,750
Five Miles From Town/We'll Die In The Pig Pen Fighting/Coal Creek March/Arnold Van Pelt's Tune/Betty Baker/Judge Parker/Possum Up A Gum Stump/Old Man Adams' Tune/Dora Dean/Rattler Treed A Possum/Rebel Raid/Greasy Coat/Ship In The Clouds/Devilish Mary/Charlie Barnett Lowe’s Tune/Lost John/Boating Up Sandy/Ozark Waltz 全18曲
ウェスト・コーストで30年以上のキャリアをもつオールドタイム・バンジョー・プレイヤーのトム・ソウバー、オザーク生まれでヴァージニア・トラディションに精通したフィドラー、ブラッド・レフトウィッチ、そしてヘイゼル・ディッケンズやマイク・シーガーとのコラボレーションで知られるアリス・ジェラード、ヴェテラン・オールドタイム・ミュージシャン3人のユニットの第3作。今作では、ケンタッキー、ウェスト・ヴァージニア、オザーク、オクラホマなどにルーツをもつさまざまなインストゥルメンタル・チューンを、トムのヴァリエーション豊かなバンジョー(マンドリン、フィドルも)とブラッドのフィドル、そしてアリスのステディなリズム・ギターで鮮やかに再現してみせる、現代版ストリング・バンドの集大成。
[FOLK & OLDTIME REISSUES AND DISCOVERIES]
●THE KINGSTON TRIO『Everybody's Talking:Recorded Live at Rockfeller's』FE-4134V VHS 60分 \4,500
Hard, Ain't It Hard/Three Jolly Coachmen/Early Morning Rain/Greenback Dollar/Everybody's Talking/Ah, Woe Ah, Me/M.T.A./Everything/Long Black Veil/Hobo's Lullaby/Tom Dooley/A Worried Man/Scotch and Soda/California 全14曲60分
フォーク・リヴァイヴァルのきっかけを作り、その中心的存在としていわゆるモダン・フォークを代表するグループだったキングストン・トリオ、これは80年代末に制作された、再結成後のメンバーによるライヴ。オリジナル・メンバーの二ック・レイノルズとボブ・シェインに、ジョージ・グローヴ(bj)という編成。オリジナル・メンバーではない、とはいえキングストン・トリオとしておそらく初めて公式にリリースされるこの作品、フォーク・ファンにはやっぱり気になる作品ではある。
●ED SNODDERLY『The Diamond Stream』MAJ-1111 CD \2,750
Band Box/Diamond Stream/Pearlie Mae/Majestic/Twist You Up/Monterey Hotel/Main St. Coffee/Kiss the Dream Girl/Morning Clinchfield/Small Southern Town/He Rides a Train/Goodbye 全12曲
かつてシュガー・ヒルからブラザー・ボーイズとして2枚のアルバムを発表しているシンガー/ソングライター、エド・スナダリーの25年に及ぶキャリアから編集された作品集。ルーツ・ミュージックをきっちりとふまえたソング・ライティングと、アコースティック楽器を巧みに生かしきった音作りが、懐かしさと新鮮さが同居する音楽を生み出している。77年録音のたぶんデビュー・アルバムからの曲や、ナッシュヴィル録音、94年のノーマン・ブレイク宅でのホーム・レコーディングなど、さまざまなシチュエーションでの音源集。初期の、ジャック・エリオットやボブ・ディランあたりに影響された、特にディランの色濃いスタイルから、次第にディープなオールドタイム、ブルースへと傾斜していく姿がよく映し出されている。
●V.A.『Songcatcher II:The Tradition That Inspired the Movie』VAN-79716 CD \2,750
Babes In The Woods(Almeda Riddle)/Georgie(Doc Watson)/The Coo Coo Bird(Hobart Smith)/The Two Lovers(Almeda Riddle)/Matty Groves(Doc Watson)/Oh Death(Dock Boggs)/Girl Of Constant Sorrow(Sarah Ogan Gunning)/Winter's Night(Doc Watson)/Black Jack Davey(Almeda Riddle)/Sugar Baby(Dock Boggs)/Wish I Was A Single Girl Again(Cousin Emmy)/Leather Britches(Fiddlin’ Arthur Smith)/Will The Weaver(Almeda Riddle)/Little Birdie(Roscoe Holcomb)/Pretty Saro(Doc Watson)/House Carpenter(Clarence Ashley)/Come All Ye Fair And Tender Ladies(Maybelle Carter) 全17曲
『OBWAT?』ほどには大きな話題とはならなかったものの、映画『Songcatcher』のサントラ盤(VAN-79586\2,750)は、同じようにストーリーと密接に絡み合ったアパラチアン・トラッドの名曲を、第一線の女性シンガーのヴォーカルでまとめあげたコンセプトが秀逸だったが、その続編となった今作は、サブ・タイトルにあるとおり、映画で使われた曲の元ネタとなった、ホンモノのトラディショナル・ミュージシャンによる、60年代フォーク・リヴァイヴァルの時代に録音されたアパラチアン・トラッドの真髄。実際にサントラ盤のほうに使われた曲は、"The Coo Coo Bird"や"Come All Ye Fair And Tender Ladies"など僅かではあるが、このコンピレーションで表現したかったであろうものは、十分に伝わってくる。ルーツ・ミュージック探求の1枚。
[COUNTRY NEW RECORDINGS]
●MERLE HAGGARD『The Peer Sessions』AUD-8152 CD \2,750
Peach Pickin' Time In Georgia/If It's Wrong To Love You/Sweethearts Or Strangers/Put Me In Your Pocket/Anniversary Blue Yodel/Shackles And Chains/Miss The Mississippi And You/It Makes No Difference Now/Whippin' That Old T. B./Hang On To The Memories/I Love You So Much It Hurts/Time Changes Everything 全12曲
カントリー・レジェンド、マール・ハガードが、ナッシュヴィルの大手音楽出版社ピア・ミュージック――あの、ブリストル・セッションで知られるラルフ・ピアが創設した出版社で、現在は彼のファミリーが運営している――のカタログから、彼の愛してやまない先人たち、ジミー・ロジャースやボブ・ウィルス&トミー・ダンカン、ジミー・デイヴィス、フロイド・ティルマンなどのクラシックを、ノスタルジックな感動を誘うスタイルで唄ったもの。1996年から99年の間に有名なブラッドレーズ・バーン他でレコーディングされたもので、当然これまで未発表だったものだが、昨年発表した『Roots Vol.1』(ANTI-86634 \2,750)、レフティ・フリゼルやハンク・ウィリアムズなどホンキー・トンク・ヒーローへのトリビュートの布石となったもの。バックを務めるのはもちろんストレンジャーズに、ピッグ・ロビンス、バディ・スパイカー、チャーリー・マッコイなど。"Hang On To The Memories"では、このとき100歳!!を迎えようとしていた作者のジミー・デイヴィス("You Are My Sunshine"で有名な元ルイジアナ州知事)が、マールとデュエットしているのも大きな話題か。

●DARYLE SINGLETARY『That's Why I Sing This Way』AUD-8151 CD \2,750
Love's Gonna Live Here Again/Walk Through This World With Me/I'd Love To Lay You Down/A-11/Long Black Veil/Kay/That's Why I Sing This Way/I Never Go Around Mirrors/Dim Lights, Thick Smoke(And Loud, Loud Music)/Make Up And faded Blue Jeans/After The Fire Is Gone(with Rhonda Vincent)/Old Violin(with Johnny Paycheck) 全12曲
あまりに真っ直ぐなクラシック・カントリーへのこだわりゆえにメジャーからカットされながらも自らの節を曲げることなく、タイトル通りの道を進み続けるダリル・シングレタリーの新作。ジャイアント・レコード時代のレーベル・メイト、ロンダ・ヴィンセントを全編ハーモニーに配し、タイトル曲以外のすべてを、バック・オウエンズにはじまり、ジョージ・ジョーンズ、レフティ・フリゼル、コンウェイ・トゥイッティ&ロレッタ・リンなどのホンキー・トンク・スタンダードで固めるという、その一徹ぶりがいかにも彼らしい。しかも、ジョーンズ、マール・ハガード、ドワイト・ヨ−カムをゲストに迎えるというこだわりようがなんとも凄い。軟弱になった最近のナッシュヴィル産カントリーへの、強烈な一撃。
[COUNTRY REISSUES AND DISCOVERIES]
●THE DINNING SISTERS『Almost Sweet And Gentle』JASCD-384 2CD \2,650
Sentimental Gentleman from Georgia/Beg Your Pardon/Harlem Sandman/Buttons and Bows/Where or When[version 1]/Aunt Hagar's Children blues/I Love My Love/Please Don't Talk About Me When I'm Gone/Brazil/Lolita Lopez/You're a Character, Dear/Love on a Greyhound Bus/My Adobe Hacienda/San Antonio Rose/Oh Monah/Do You Love Me?/Fun and Fancy Free/The Iggity Song/Bride and Groom Polka/Wave to Me My Lady/Years and Years Ago/Melancholy/The Way Yyou Look Tonight/If I Had My Life to Live Over/They Just Chopped Down the Old Apple Tree/Pretty Girl Milking Her Cow/Pig Foot Pete/Down in the Diving Bell/Better Not Roll Those Blue, Blue Eyes/Hawaiian War Chant/Clancy/Hold Everything('Til I Get Back to You)/Pretty Little Busybody/Three-Quarter Boogie/Molly Malone/I Wonder Who's Kissing Her Now/Sometimes I'm Happy/Once in a While/Drop me a Line/I Don't Know Why/I Get the Blues When It Rains/Little Te-Long/Shine on Harvest Moon/The Statue in the Park/I Get Along Without You Very Well/The Lilac Tree/There's a Rainbow 'Round My Shoulder/The Old Music master/Winter Wonderland/We'll Meet Again/Where or When[version 2]/As Time Goes By 全52曲
先頃紹介した『Back in Country Style』(JASMD-3551 \1,980)が大好評のダイニング・シスターズの、もうひとつのコレクション。40年代後半から50年代に一世を風靡したアンドリュース・シスターズやボズウェル・シスターズなどと同じラインの、シスター・グループのひとつ。こちらは、彼女たちの本線ともいうべき、ポップ・チューンやジャズ・スタンダードを、ライトな感覚のジャジーなサウンドにのせた見事なハーモニーで唄った、楽しい作品集。戦後すぐに入ってきたアメリカ音楽の、最初のスタイルともいえるこの手の音楽を原体験として育ってきたオジサンたちにはとっても懐かしいものであり、若者にはたぶんムチャクチャ新鮮な音楽として受け入れられるだろう。スウィンギーなギターやフィドル、ヴィヴラホーン、ピアノに管楽器そしてストリングスと、ノスタルジックでセンチメンタルな、でも何故か元気が沸いてくるような、アメリカン・ポップスの源流。姉妹の小粋に、愛らしく、ときにコケティッシュなトリオ・コーラスを武器に、キャピトル・レコードに残した全52曲集。
●LORETTA LYNN『All Time Greatest Hits』UNI-170281 CD \2,650
Wine, Women & Song/Happy Birthday/You Ain't Woman Enough(To Take My Man)/Don't Come Home A Drinkin'(With Lovin' On Your Mind)/Fist City/You've Just Stepped In(From Stepping Out On Me)/Woman Of The World(Leave My World Alone)/Coal Miner's Daughter/After The Fire Is Gone(with Conway Twitty)/Lead Me On/(with Conway Twitty)/One's On The Way/Rated X/Love Is The Foundation/Louisiana Woman, Mississippi Man(with Conway Twitty)/As Soon As I Hang Up The Phone/(with Conway Twitty)/Trouble In Paradise/When The Tingle Becomes A Chill/Feelins'(with Conway Twitty)/Out Of My Head And Back In My Bed/Somebody Somewhere(Don't Know What He's Missin' Tonight)/She's Got You/I Can't Feel You Anymore 全22曲
デッカ・カントリーのトップ・スターとして、メインストリーム・カントリー・スタイルで絶大な人気を博したロレッタ・リンの全盛期、1964年から78年のヒット22曲集。初期の、ホンキー・トンク・ソングの女性像をひっくり返した曲趣が当時としてはユニークだった"You Ain't Woman Enough"や"Don't Come Home A Drinkin'"から、彼女の代名詞となった"Coal Miner's Daughter"そしてコンウェイ・トゥイッティとの"After The Fire Is Gone"など、実に16曲ものナンバー・ワン・ヒットを送り出し、RCAのナッシュヴィル・サウンドとは一線を画したストレートなホンキー・トンク・スタイルが、多くのフォロワーを生んでいる。
●RICKY SKAGGS『Uncle Pen』MME-71090 CD \1,980
Uncle Pen/Don't Get Above Your Raisin'/Your Old Love Letters/If That's The Way You Feel/Don't Let Your Sweet Love Die/Lost To A Stranger/Hold Whatcha Got/Wheel Hoss/I'm Ready To Go/Can't You Hear Me Callin' 全10曲
スタンレー、カンジェン、ニュー・サウス、ブーン・クリークそしてエミルー・ハリスのホット・バンドでのキャリアをバネにカントリー・シンガーとして独立、スターの座を射止めたリッキー・スキャッグスの、80年代、エピックに残した多くのアルバムから、ブルーグラス・ソングの完璧のカントリー・アレンジ10曲集。メインストリーム・カントリーにブルーグラスのレパートリーと、アコースティック楽器のノウハウ、ハイ・ハーモニーなどのブルーグラス・コーラス技法を持ち込み、ネオ・トラディショナリストと呼ばれるスターたちの先駆者となったリッキーの名唱集。レイ・フラック、ブルース・バウトンなどカントリー畑のテクニシャンに、ビル・モンロー、ジェリー・ダグラス、ボビー・ヒックス、ルー・リードなどを加えた、リッキー流ニュー・カントリーが実に爽快。
●MICHAL MARTIN MURPHEY『Cowboy Classics:Playing Favorites II』RWP-6006 CD \2,650
I Ride an Old Paint/Whoopie Ti-Ti-Yo/The Old Chisolm Trail/Strawberry Roan/Red River Valley/Little Joe the Wrangler/The Colorado Trail/Tying Knots in the Devil's Tail/When the Work's All Done This Fall/The Yellow Rose of Texas/Utah Carroll/The Streets of Laredo/I Ride an Old Paint(reprise) 全13曲
現代版カウボーイ・シンガーの代表選手、マイケル・マーティン・マーフィが愛してやまないカウボーイ・クラシックをリメイクしたフェイヴァリット・ソング集。昨年発売された第一集『Playing Favorites』(RWP-6005 \2,650)は、サム・ブッシュなどを迎えた彼のオリジナル曲リメイク集だったが、今回は、かつてワーナー・ウェスタンの中心メンバーとしてウェスタン復興に尽力した時期に手がけたスタンダード特集。ホンモノのカウボーイ・ソングが密かに人気を集める昨今、ナイスな企画。
●NEW RIDERS OF THE PURPLE SAGE『N.R.P.S./Powerglide』BGOCD-551 2CD \2,950
I Don't Know You/Whatcha Gonna Do/Portland Woman/Henry/Dirty Business/Glendale Train/Garden Of Eden/All I Ever Wanted/Last Lonely Eagle/Louisiana/Dim Lights, Thick Smoke(And Loud, Loud Music)/Rainbow/California Day/Sweet Lovin' One/Lochinvar/I Don't Need No Doctor/Contract/Runnin' Back To You/Hello Mary Lou/Duncan And Brady/Willie And The Hand Jive 全21曲
アメリカン・ロック史上最高のジャム・バンド、グレイトフル・デッドのオフショット・バンドとして出発し、デッドへッズを中心にウェストコーストでひとつの時代を作ったニュー・ライダース・オヴ・ザ・パープル・セイジの、初期2作(71年と72年作)のCD化。もともとは、デッドのアルバム『Working Man's Dead』をきっかけに、よりカントリー・サウンドを採り入れるべく、ジェリー・ガルシア(ペダル・スティール)他のデッドのメンバーに、デヴィッド・ネルソン(g,m,vo)が参加したバンドで、デッド色を映したアシッド風味のカントリー・ロックでスタート、次第にストレートなカントリー・ロックへと移行していった。この初期2作でも、メンバーのひとり、ジョン・ドーソンのオリジナルで固めたファーストに比べて、セカンドでは、スティールにバディ・ケイジが加わり、"Dim Lights, Thick Smoke"や"Hello Mary Lou"などのカヴァー・ヴァージョンで、快調にぶっとばしてカントリー・ロックの醍醐味を演出してみせる。デッド・ファミリーのイメージがつきまとった結果か、フライング・ブリトウ・ブラザーズやポコほどには名前を残すことはなかったが、ピーター・ローワンの"Panama Red"をヒットさせるなど、カントリー・ロックを語る上で忘れてはならない存在だった。
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